
Emergency and Critical Care Medicine救急集中治療医学

救急初期診療から全身管理まで救急医療には広島県内から小児から成人まで、また内科系疾患から外傷を含め多岐にわたる年齢・症状の患者が搬送されてきます。また他病院からの重症患者の転院搬送も積極的に受け入れています。救急車やヘリにて初期診療を行い、必要であれば他科と連携して治療を行い、その後の管理も含め救急科主体で行っています。その他Rapid response system (RRS)による院内での急変対応も積極的に行っています。

当院は広島県唯一の高度救命救急センターとして、広範囲熱傷,四肢切断,急性中毒の患者さんを集約化して受け入れています。加えて、外傷、呼吸不全、小児などの最重症患者を集約化して受け入れています。令和6年度の救急車受入台数は3600台超、厚生労働省の定める重篤救急患者受け入れ数は1200人超です。
厚生労働省による救命救急センター充実段階評価は、平成30年度に評価が変更(S評価の新設)後、途切れることなくS評価を受けています。令和7年度の評価点数は99点で、中四国・九州では2番目に高い評価を受けています。
三次救急の応需率は94%(2025年度)であり、“断らない3次救急”を実践しています。

ドクターヘリとは、医療機器や医薬品を装備し、医師、看護師が搭乗して救急現場に出動する、救急医療専用ヘリコプターです。
救急搬送時間を短縮するのみではなく、病院前の救急現場に医療チームを派遣し、現場から救急診療を提供することのできるmedical delivery systemであるといえます。
広島県は多くの島嶼部や中山間地を抱え、北海道とならんで我が国でも多くの医療過疎地を有する地域です。広島大学病院はドクターヘリ基地病院であり、その機動性を活かして30分以内に県内全域に迅速に救急集中治療を提供する役割を担っています。

広島県ドクターヘリの特徴は、複数医療機関による協力体制、発進基地方式による運用と消防・防災ヘリとの連携、中国地方5県広域連携に基づく隣県との協力体制です。
救命救急センターである県立広島病院をドクターヘリ協力医療機関とし、また、県内18の災害拠点病院と連携し、ドクターヘリ事業とともに、救急医療を支える体制を構築しています。学生、研修医、消防職員の教育をはじめ、他医療機関からも救急医療に従事する医師の研修を受け入れ、人材育成を図っています。

広島ヘリポートに発進基地を整備し、専従の医師・看護師を配備しています。広島市消防航空隊基地と隣接して整備されており、多数傷病者発生時・重複要請時には、消防・防災ヘリと連携してヘリコプター救急医療体制の充実を図っています。

中国地方では広島県の他、岡山県、島根県、山口県にドクターヘリが配備されています。ヘリコプターが県域を越えて活動できるよう、平成25年1月に中国5県知事およびドクターヘリ基地病院長により協定が締結されました。これにより、現場に近いドクターヘリが迅速に活動し、また、災害時には複数のドクターヘリが協働する体制を構築しています。


ECMOカーは、重症患者さんに高度な救急医療を行いながら大学病院まで搬送できる特殊車両です。車内には人工呼吸器やECMOなどの高度医療機器を備え、止血処置などの緊急処置にも対応できる設備が整えられています。医師や看護師を中心とした医療チームが車内で治療を行いながら搬送できるため、患者さんの状態を安定させたまま高度医療につなぐことが可能です。

この車両の大きな特徴は、交通事故や火災などの発災現場へ医療チームを迅速に送り込み、現場から高度な救急医療を開始できる点にあります。現場で治療を行いながら大学病院へ搬送することで、重症患者さんの救命率向上を目指します。さらに、大規模地震などの災害時には、インフラが損なわれた被災地にも出動し、医療搬送チームとして活動します。
広島大学では2026年4月よりECMOカー事業を開始し、遠隔ICUとも連携しながら、地域の救急医療と災害医療を支える新しい取り組みとして運用しています。
2021年の法改正により、救急救命士は救急車内だけでなく病院内でも、医師の指示のもとで処置を行えるようになりました。こうした病院に所属する救急救命士は「ホスピタルEMS」と呼ばれ、救急外来での処置や重症患者の搬送などを担い、救急医療を支える新しい存在として注目されています。
広島大学では2025年4月より5名の病院救急救命士(男性4名 女性1名)を採用し、救急外来や高度医療搬送の現場で活躍しています。現場から病院内まで切れ目のない医療を実現し、広島の救急医療の質と救命率向上に貢献しています。



救急ワークステーションとは、救急車と救急隊が消防署ではなく病院に常駐する新しい救急医療の仕組みです。救急隊は病院から現場へ出動でき、必要に応じて医師や看護師が同乗する「ドクターカー」のような運用もスムーズに行えます。
出動がない時間には、救急隊員が救急外来(ER)などで医師の指導を受けながら実習を行い、救急救命処置の技術向上につなげています。
広島大学病院では、広島市との協定に基づき、2022年10月からこの救急ワークステーションを運用しています。交通事故などの現場に医師・看護師・救急救命士がワンチームで出動し、迅速な救命活動を開始できる体制づくりに貢献しています。

緊急被ばく医療; Radiological Emergency Medicineは,いつでもどこでも誰でも受けられる医療といえます。東日本大震災・福島第1原発事故以降さらにその重要性は更に叫ばれています。東海村JOC事故以来、本邦に緊急被ばく医療システムが整備され、当時より広島大学病院は国から3次被ばく医療機関に指定され、様々な活動を行ってきました。

2011年3月に起こった東日本大震災、それに伴う東京電力福島第1原発事故は全世界に大きな衝撃をもたらし、長年緊急被ばく医療に関わってきた私達にも大きな影響をもたらしました。福島第1原発事故後現地にスタッフを派遣し、住民への線量測定やその後の健康管理、被ばく医療体制の構築を行ってきました。それは我々にとっても、とても有意義な経験となり、必ず今後に生かしていく使命があると考えています。

地震や津波、土砂災害などの自然災害や航空機事故・列車事故といった人為災害で同時に多数の傷病者が発生した場合には、傷病者数に対して医療資源が圧倒的に不足した状態になります。限られた医療資源で多数の傷病者の治療に当たることが求められ、平時とは異なる概念の下で医療を行う必要があります。
わが国では、阪神・淡路大震災を契機に、災害拠点病院の整備、広域災害・救急医療情報システム(Emergency Medical Information System : EMIS)の整備、災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team : DMAT)の養成が行われてきました。

当院は広島県災害拠点病院に指定されています。高度救命救急センターのスタッフを中心に多職種からなる29名のDMAT隊員が在籍しています。2011年3月の東日本大震災、2015年8月の広島市大雨土砂災害、2018年7月の広島市豪雨災害において、現地へのDMATの派遣、拠点病院として重症患者の受け入れを行ってきました。
平時から病院前救急医療や重症傷病者の診療を担当する私たちには、災害医療においても中心的な役割を担っていくことが求められています。DMAT隊員(令和7年2月現在):25名
医師:10名(統括DMAT5名)、看護師:9名
業務調整員:6名(薬剤師3名)
