Emergency and Critical Care Medicine救急集中治療医学
Research Content
私たちは、ECMO治療を受けた重症呼吸不全患者の胸部CT情報を含む、世界初の大規模多施設レジストリを構築しています。従来のECMOレジストリは、人工呼吸設定や動脈血ガス分析などのデータに基づいていましたが、本研究では胸部CT画像を統合的に解析し、より精密な治療効果予測を行っています。これにより、病態に応じた個別化治療戦略を確立し、ECMO管理の治療成績向上に貢献することを目指しています。
* ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation(体外式膜型人工肺)
** 前橋赤十字病院、済生会宇都宮病院、東京医科歯科大学生物統計学分野研究室との共同研究
私たちは、ECMOを使用した重症呼吸不全患者さんにおける最適な人工呼吸管理を確立するための多施設共同前向き研究を実施しています。特に、個別化PEEP設定に着目し、肺胞虚脱の防止と過膨張の抑制のバランスを最適化することで、生存率の向上を目指しています。多施設の臨床データを統合・解析し、安全かつ効果的な人工呼吸管理の標準化を推進し、ECMO患者の予後改善に貢献したいと考えています。
* PEEP: Positive end-expiratory pressure(呼気終末陽圧)
私たちは、ARDS診療ガイドライン2026作成委員会と協力し、日本初の大規模ARDSレジストリを構築しています。本プロジェクトでは、従来のデータに加え、リクルータビリティや電気インピーダンストモグラフィ(EIT)などの新技術を活用し、より精密な病態評価を目指しています。未解決の臨床課題を整理し、科学的根拠に基づく最適な治療戦略の確立を目指し、ARDS治療の革新に貢献したいと考えています。
* ARDS: Acute respiratory distress syndrome(急性呼吸窮迫症候群)
ARDSでは、強い自発呼吸が肺損傷を悪化させる一方、完全な筋弛緩薬の使用は横隔膜の萎縮を引き起こします。私たちは、「部分的筋弛緩薬」を用いることで肺と横隔膜の両方を保護できるかを、ウサギを用いた動物実験と臨床試験で検証しています。この研究を通じ、ARDS患者の死亡率低下や人工呼吸器装着期間の短縮を目指し、より安全で効果的な治療法の確立に取り組んでいます。
私たちは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含む急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態解明と新たな治療法の開発に取り組んでいます。とくに、下気道細菌叢がARDSの進展や予後に及ぼす影響に着目し、ARDS患者の血液や下気道検体を用いて病態形成に関わる細菌由来タンパクを解析しています。本研究により、ARDSの治療標的を明確にし、個別化医療の発展に貢献することを目指しています。最前線の研究を通じ、臨床に還元できる知見を創出していきます。
敗血症の生存率は向上していますが、その後、多くの患者さんが運動機能や認知機能の低下、精神障害を抱える集中治療後症候群(PICS)に苦しんでいます。当研究では、ミトコンドリア外膜に存在するTSPO(Translocator Protein)に着目し、敗血症後のPICS発症への関与を動物モデルで解析しています。TSPOの役割を明らかにすることで、PICSの予防や治療法開発につなげ、救命後の患者の生活の質向上を目指します。
救急医療の現場では、突然の死に直面した患者家族が適切なケアを受けられず、病的悲嘆や抑うつを発症することが課題となっています。私たちは、医療者と一般市民への大規模調査を通じて家族ケアの現状を分析し、科学的根拠に基づく「救急臨場モデル」を構築・検証します。家族支援を標準化することで、遺族の精神的負担を軽減し、より温かく寄り添う医療の実現を目指しています。
私たちは、呼吸音の可視化・自動解析を可能にする電子聴診器をパイオニア社と共同開発しました。従来、聴診は経験に依存する診察手法でしたが、本デバイスにより呼吸副雑音の種類や強さを客観的に評価し、データとして長期間保存できます。タブレットと連携することで、専門医以外の若手医師や看護師でも、診断精度を向上させることが可能になります。これにより、呼吸器診療の質を飛躍的に向上させることを目指しています。
電子聴診器の概観
電子聴診器の製品化に関する記事
http://pioneer.jp/biz/mhbd/mss/index.php
http://pioneer.jp/corp/news/press/index/2062/
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/011205777/?ST=health
救命センターやICU・手術室では、呼吸音の変化が患者の急変を示す重要な兆候となります。しかし、従来の聴診は短時間の評価に限られ、客観性にも課題がありました。私たちは、呼吸音を可視化・自動解析システムを発展させ、連続モニタリングできる革新的なシステムを開発しています。本システムにより、ICUや手術室における呼吸異常の早期発見と迅速な対応が可能となり、より安全で質の高い医療提供が実現できます。本プロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、実用化を進めています。
新型コロナウイルス感染症の流行により、医療設備が限られた環境でも患者管理を行う必要性が高まりました。私たちは、患者自身や家族が手軽に呼吸音を録音し、遠隔地の医師へ自動送信できるシステムを開発しています。本システムは、異常所見の自動判定機能を備え、ホテルや自宅療養中の患者の急変を早期に発見できることを目指しています。これにより、将来再び起こり得る新興・再興感染症流行時の、医療従事者の負担軽減と、より安全な遠隔診療の実現を目指します。本プロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け、実用化を進めています。
間質性肺炎急性増悪は、日本人に好発することが知られており、遺伝的・環境的因子が関与する可能性が指摘されています。私たちは、ドイツとの国際共同研究を通じて、臨床データ・発現タンパク・遺伝子・病原微生物など多角的な視点から病態を解明し、新たな治療標的分子を特定することを目指しています。本研究により、間質性肺炎急性増悪の発症メカニズムを解明し、効果的な新規治療法の開発につなげることを目指しています。
COVID-19パンデミック時、私たちは全国の病床・人工呼吸器・ECMOの使用状況をリアルタイムに可視化するクラウドシステムを開発しました。さらに、機械学習(AI)を活用し、重症化予測やECMOセンターへの自動マッチングシステムを構築しています。今後の新興・再興感染症に備え、迅速な患者対応と医療資源の最適活用を可能にするこのシステムの実用化を、日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと推進しています。
私たちは、救急・災害医療におけるICTおよびIoTの利活用を推進し、迅速かつ的確な医療提供を実現するためのシステム開発を行っています。救急現場の映像・生体情報をリアルタイムに伝送する救急画像伝送システムや、傷病者情報を迅速に共有する救急搬送支援システムを構築。さらに、デジタルペンを活用したトリアージタグや診療記録システム、ドローンを活用した情報共有にも取り組んでいます。産学官連携により、災害時の医療対応をより効率的かつ効果的に進化させることを目指しています。
* ICT: Information and communication technology(情報通信技術)
** IoT: Internet of Things(モノのインターネット)
心停止後症候群の患者に対し、神経学的予後を早期に予測することは治療方針の決定に不可欠です。私たちは、予後予測ツール「CASTスコア」とその簡易版「rCAST」を開発し、Web版・iPhone版として提供しています。現在、rCASTに基づく低体温療法と平温療法の多施設無作為化比較試験を岡山大学と共同で計画し、個別化治療戦略の確立を目指しています。これにより、最適な治療選択を可能にし、患者の転帰向上に貢献することを目指します。
* CAST score: Cardiac arrest syndrome before therapeutic hypothermia score(低体温療法前の心停止症候群スコア)
** rCAST: revised CAST(修正版CAST)、Web版: http://www.castscore.sakura.ne.jp、iPhone版: Appleの公式サイトから無料で入手可能
*** 岡山大学との共同研究
ドクターヘリは、医療スタッフと資源を迅速に現場へ届け、診断・治療・搬送の時間を短縮することで救命率を向上させる重要な技術です。しかし、特殊な環境下での医療行為には、高度な知識と技能が求められます。私たちは、情報ネットワークの活用や搬送システムの改良に関する研究を進め、ドクターヘリの有効活用と技術向上を目指しています。また、航空医療学会のオンラインレジストリに参加し、データを活用した運用改善にも取り組んでいます。