
Emergency and Critical Care Medicine救急集中治療医学
ICU患者の回復には主病態に対する治療と全身管理のための集中治療の両輪が不可欠です。我々は、介入の益と害のバランスを見極めて患者にとって真に必要な治療のみを提供する、"Less is More"のコンセプトで集中治療にあたっています。高度救命救急センターとして県内重症患者を広く集約化するとともに、院内重症患者ICUの管理でも中心的な役割を担っています。

重症呼吸不全患者に対する体外式膜型人工肺(VV-ECMO)症例は県内で当院に集約されており、国内有数の症例数を誇っています。呼吸器専門医の資格をもつ専門医により間質性肺炎やその他の呼吸不全の救命に効果を上げています。看護師や臨床工学技士、理学療法士など多職種でのECMOチームを構築しており、最新の研究に基づく人工呼吸器管理からECMOシミュレーションまで多くの院内勉強会を開催しています。循環不全に対するVA-ECMOや小児患者のECMOなども、症例を積み重ねています。

1日のスタートはカンファレンスから始まります。
最大32床を有する集中治療病棟の患者について、毎朝のカンファレンスでは熱い治療方針の議論がかわされます。重症患者の集中治療を中心とし、救命センターとして急患対応にもあたっています。勉強会や抄読会など日常診療以外での学びも多く、大学院で研究の研鑽を積んでいるスタッフも多くいます。また、ママさんを含んで医局の4割は女性医師で、女性にも働きやすい環境を提供できています。

救急集中治療は黎明期にあり、先達の絶え間ない努力を引き継ぎ飛躍させていく義務があります。Journal Clubを通して臨床研究の理解を深め、レターの投稿や自分での研究計画の立案などを上級医と共に学びます。もちろん若手であっても学びだけでなく、多くの研修医やポリクリの医学生へのアウトプットを経験することで、教育の醍醐味を味わうことができます。自らが教えた研修医や学生が救急集中治療の門を叩いて来てくれた時の喜びは診療とは一味違うものです。

遠隔ICUとは、離れた場所にいる集中治療の専門医や看護師が、ネットワークを通じて患者さんの状態を確認しながら、現場の医療スタッフを支援する新しい医療の仕組みです。患者さんの変化を早く捉え、必要な助言を届けることで、より安全で質の高い医療につながります。従来の電話紹介は、急変など「何かが起きた後」に行われることが多いのに対し、遠隔ICUでは異変の兆しを早く察知し、現場が気づく前に助言することも可能です。
広島大学では2026年4月より三次中央病院と連携し、この遠隔ICU事業を開始します。地域の医療を支え、命を守る救急集中治療の新しい取り組みとして期待されます。
モバイルICU/ECMOカーは、重症患者さんを治療しながら搬送できる特殊車両です。車内には人工呼吸器やECMOなどの医療機器を備え、医師・看護師・臨床工学技士が協力して処置できる広いスペースが確保されています。振動を抑えた構造や安定した電源・酸素設備により、搬送中も安全に治療を続けることができます。
この車両は、重症呼吸不全や心不全など「移動自体が大きなリスクとなる患者さん」を高度医療機関へ搬送する際に力を発揮します。現場から治療を始めながら搬送できるため、これまで移動が難しかった最重症の患者さんにも新たな治療の機会を広げます。
広島大学では2026年4月よりモバイルICU/ECMOカー事業を開始します。さらに遠隔ICUとも連携し、搬送中のデータを広島大学病院へ共有することで、到着前から治療計画を準備できる「動く遠隔ICU」として運用される予定です。